スキルアップをするために少し難しいものに挑戦
はじめに
若手社員が仕事の中で成長するには、日々の業務において、「少し難しいものに挑戦」する経験が必要です。普段の業務において、指示された仕事だけを行うのでは、スキルアップや成長の機会は限られてしまいます。企業の人事担当者や管理職にとって、若手が主体的に挑戦し成長できる環境を整えることは、企業全体の成長にもつながる重要なテーマです。
本コラムでは、企業の人事担当者、若手社員の上司、中小企業の経営者や管理職の方々に向けて、若手社員が「少し難しいものに挑戦」することで得られるスキルアップの意義と、企業がそれをどのようにサポートできるかについて解説します。そして、若手育成における挑戦の重要性を理解していただき、成長を促進するためのヒントをお伝えします。
1.「少し難しいものに挑戦する」とは
若手社員がスキルアップを目指すためには、現在のスキルを基に「少しだけ難しい」仕事に取り組むことが理想的です。この「少し難しい」とは、少し努力をすれば達成できるけれども、新たなスキルや知識を必要とするレベルの仕事を指します。このような仕事に挑戦することで、若手社員は新しいスキルを身に付けるだけでなく、成長への自信も深めることができます。
例えば、入社して数年の若手社員が基本的な業務の流れを把握したタイミングで、より複雑なプロジェクトの一部分を任せる、あるいは顧客対応の一部を担当させることが考えられます。これにより、彼らは仕事に対する視野が広がり、自分が持つスキルや知識を活かす場が増えます。若手にとって、少し難しい挑戦はスキルアップのための貴重な経験であり、成長を感じられる成功体験を積む機会でもあります。
このように、若手社員が日々の業務でスキルを高めていくには、「挑戦」が欠かせません。前述したように指示された作業だけを淡々と行うだけでは、スキルアップは望めません。常に自分のスキルとキャリア形成を意識し、「少し難しいもの」に取り組む姿勢を持つことが、成長の鍵となります。
2.楽しさがスキルアップを加速させる
仕事は一日において多くの時間を占めるため、仕事を「楽しめる」かどうかは、スキルレベルの高さに影響されます。
若手社員が挑戦を続け、成長していくためには、業務そのものを楽しむことが大切です。挑戦することで得られる達成感や自己成長の喜びは、さらなるモチベーションの源となります。仕事の楽しさがスキルアップに与える影響を理解する上で、ゲームを例にしてみましょう。
ゲームが好きな人は、少しずつ難易度が上がっていく過程を楽しみ、攻略方法を工夫しながらレベルアップしていきます。このプロセスは、仕事でのスキルアップにも通じるものがあります。
日々の業務の中で、新しいことや少し難しい課題に挑戦することで、達成感を味わい、次のレベルに進む意欲が高まります。仕事を「ゲームのように楽しむ」姿勢を持つことで、若手は成長しやすくなり、挑戦への意欲が増していくでしょう。
企業の人事担当者や管理職の方は、若手が挑戦を楽しめる環境づくりを意識してみてください。たとえば、新しいタスクに対して自由な発想やアイデアを求める場を提供する、定期的に振り返りの時間を設けて進捗や達成を共有するなど、若手が業務を楽しく感じられるような工夫が必要です。
3.自己マネジメントと考える時間の必要性
スキルアップには「自己マネジメント」が重要です。若手社員が成長を続けるためには、どのように自分のスキルを高め、キャリアを築いていくかを考え、計画する力が求められます。
すなわち、若手が自らのスキルを向上させるためには、日々の業務の中で何に挑戦し、何を改善すべきかを自分で管理する力が求められます。特に、業務に追われていると、自分にとって「少し難しいこと」が何かを見極める余裕がなくなりがちです。そのためには「考える時間」を確保することが欠かせません。
自己マネジメントの第一歩として、日々の業務の中で自分に必要なスキルや知識を見極め、次に挑戦すべき「少し難しい」課題を意識することが大切です。
考える時間を意図的に確保することで、若手社員は現在の自分のスキルレベルや今後の課題を明確にし、スキルアップの道筋を見つけやすくなります。企業としても、若手社員がこうした自己マネジメントの機会を持てるよう、サポートが重要です。定期的な面談などにより、次の目標を設定しやすくする仕組みを整えましょう。
4.挑戦を通じた自己成長の実例
具体的な挑戦の一例として、ある若手社員の経験を取り上げます。この社員はIT企業でソフトウェア開発に従事しており、最初はプログラミング担当として与えられた指示(設計書)に従って仕事を進めていました。しかし、本人はアイデアを考えたり新しい機能を構築したりすることに興味がありました。そのため、上司に「設計書の一部でも担当したい」という希望を伝えました。これが「少し難しいものに挑戦する」姿勢であり、この挑戦を通じてプログラミングよりも上位工程である新たなスキルが身につきました。同時に設計書を書くことで文章力も向上しました。
実はこれは、私の若い頃の経験です。
自分から挑戦したい意志を上長に表明することで、本人のやる気と向上心が認められると同時に、スキルアップへの道が開かれます。
企業側も、社員が挑戦意欲を示した際にはサポートし、彼らの成長意欲を積極的に応援する体制が必要です。このように、自ら興味のある分野に結びつけて挑戦することで、モチベーションを高めながらスキルを磨くことができます。
5.若手育成の具体的な方法例
若手がスキルアップを果たすための挑戦をしやすいよう、企業側で取り組むべき具体的な方法についていくつかご紹介します。
- 段階的な目標設定
若手が段階的な成長を遂げられるよう、適切な目標を設定しましょう。たとえば、「3ヶ月後には○○のスキルを身につける」という具体的な目標を設定することで、挑戦への明確な指針が生まれます。 - 挑戦する場の提供
新しいプロジェクトや部門横断的なチーム活動に若手を積極的に参加させ、少し難しいことに取り組む場を提供しましょう。企業内でのチャレンジが若手の成長を促進します。
- フィードバックを重視する
若手が挑戦した成果に対して、上司や先輩からのフィードバックを重視しましょう。適切なフィードバックは、挑戦から得た気づきを深めるために不可欠です。また、成果に対して認めること・褒めることにより承認欲求が満たされます。
- リスクを恐れず挑戦できる風土づくり
若手が失敗を恐れずに挑戦できる企業風土を醸成しましょう。失敗も成長の一部であると認識し、挑戦を歓迎する姿勢が大切です。
- 成功体験を積ませる
若手が挑戦する中で、小さな成功体験を積み重ねられるようにすることが大切です。例えば、業務の中で達成しやすい目標を設定し、それをクリアすることで「自分にもできる」という自信を育てます。これにより、若手はさらに大きな挑戦に向かう意欲を持つことができ、スキルアップへの意識が向上します。
- 挑戦を評価する仕組み
若手の挑戦が企業全体で認められる文化を醸成するため、挑戦の成果を評価する仕組みを設けましょう。たとえば、定期的な成果発表会や報告の場を設け、若手の挑戦の意義を組織全体で共有します。挑戦に対して適切なフィードバックや評価を行うことで、挑戦すること自体が企業において価値のある行動と認識され、若手の成長が促進されます。
6.挑戦がもたらす企業への長期的なメリット
若手がスキルアップのために「少し難しいものに挑戦」することは、個人の成長だけでなく、企業全体にもさまざまなメリットをもたらします。挑戦を通じて成長した若手社員は、業務への意欲が高まるだけでなく、企業へのエンゲージメントが深まり、離職率の低下にも寄与します。さらに、挑戦する風土が企業全体に浸透することで、組織全体の生産性も向上します。
企業の成長と若手の成長は密接に関連しているため、若手の挑戦やスキルアップを積極的に支援することは、長期的な競争力向上にもつながります。企業として、若手がスキルアップのために挑戦しやすい環境を整えることで、未来を見据えた持続的な成長を実現できるのです。
おわりに
若手が主体的にスキルアップを目指し、少し難しい挑戦を通じて成長することは、彼らのキャリア形成と企業の持続的な発展にとって極めて重要です。挑戦を通じてスキルを高める若手は、企業にとって大きな価値をもたらします。企業の人事担当者や管理職の皆様は、若手が挑戦しやすい環境を提供し、彼らの成長を支えるサポートを心掛けていただきたいと思います。
挑戦の意識が企業全体に根付くことで、若手は成長し、企業も共に発展します。
若手がスキルを磨き、挑戦を楽しむ企業風土を築くことこそ、企業の競争力を高め、未来の成功に繋がる一歩となるでしょう。
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この記事を書いた人
森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。