行動する 〜考えてばかりはいられない〜

はじめに

近年、「考える力」が重視されるようになった一方で、「行動の重要性」が軽視されがち(保守的)になってはいないでしょうか。確かに論理的思考や計画力はビジネススキルの基礎ですが、それだけでは実務における課題を乗り越えることはできません。特に若手育成の場では、「まずやってみる」「試してみる」といった“行動する姿勢”が効果を大きく左右します。

本稿では、「行動する」ことの意義についてわかりやすく解説します。

1.計画だけでは成果は出ない

仕事をする上でしっかりと計画して実行することはとても重要です。計画がないまま仕事を進めては、業務が進んでいるのか、遅れているのかさえ分かりません。そして、次にやるべきことが明確になっていないと当然ながら業務を前に進めることができなく、効率が大きく低下することになります。

しかし、仕事をやる上では、いつまでも考えて(計画)ばかりではもっと前に進めません。ご存じのように、実際にやってみなければ結果がわからない仕事はたくさんあります。ですから、いつまでも計画に時間をかけすぎないことも重要なのです。行動に移しましょう。

計画はあくまで「行動のための準備」であることを再確認する必要があります。

2.行動こそが気づきを生む

「行動しなければ、何も始まらない」。これはビジネススキルの基本でありながら、現場ではしばしば見過ごされがちです。実際に作業を始めてみる、手を動かしてみる、誰かとディスカッションしてみることで、初めて課題の本質に気づくことがあります。

若手エンジニアにとっては、設計どおりにコードを書いても思った通りに動作しないという経験は、まさに“行動の中から得られる学び”です。

いつまでも考えていないで、一歩踏み出してみましょう。わからないことをそのままにせず、だれかと相談することも行動です。先輩社員に相談しましょう。こうした小さな一歩を積み重ねることが、自信と実力を養っていくのです。

3.失敗を恐れずに挑戦させる

企業にとって「失敗を避ける文化」は一見すると安定的な運営に見えるかもしれませんが、若手の成長という観点では大きなマイナスになります。若手に対しては、失敗を前提とした指導も求められます。若いときはどんどんやってみればいいのです。

「やってみて、失敗したらしっかりと反省・共有して、次に活かす」というサイクルこそ、若手育成にとって不可欠です。

管理者や人事担当者には、若手に「まずはやってみよう」と背中を押すマインドが求められます。失敗を単なるマイナスではなく、“価値ある学び”と捉える意識改革が、組織全体の成長を促すのです。

4.顧客の価値は行動でしか見えない

特にBtoBビジネスにおいて、お客様の真のニーズを机上で読み解くことは困難です。エンジニアとして製品やサービスを提供する際も、実際に顧客の現場へ足を運び、対話を通じて価値観や課題を直接ヒアリングすることが求められます。

お客様と自社とでは文化や前提が異なります。だからこそ、若手にも早い段階から「顧客と話す」「現場を訪問する」機会を設けることが重要です。お客様と話して初めてお客様が考えている本当の価値がわかります。机上でいくら考えても答えはでません。

机上での想定と現場とのギャップに気づき、自らの仕事の目的や貢献を実感することができます。

製品を提供する場合にもお客様の役に立たなければ意味がありません。そのためには、行動(ex:顧客訪問&ヒアリング)する必要があります。そして、行動の結果わかった顧客様の価値に合った製品を提供することが重要です。


5.考えるタイミング、行動するタイミング

「考えるべきか、行動するべきか」の判断は、ビジネススキルの中でも高度なスキルです。すぐに行動しては無謀であり、考えすぎては停滞する。このバランスをどう取るかは、若手一人ひとりの経験と学びによって養われていきます。

だからこそ、若手は「まずは行動してみる」「手を動かす」ことを基本に据えながらも、行動の振り返りや内省の時間を設けることが有効です。行動と思考を両輪で回すことで、自律的な成長が促進されます。

仕事をする上で行動してみないとわからないことはたくさんあります。特に相手がいる場合、どんな反応をするかは、話してみないとわからないことが多いかと思います。人は想定通りには、反応してくれません。

上司や先輩社員が、「なぜ今行動したのか」「なぜ今は立ち止まって考えるのか」といった思考のプロセスを言語化して共有することは、若手にとって大きな学びとなります。


6.ITの現場の例

IT関連の方は、当然設計書を作成してから開発を始めるかと思います。しかし、設計書に従って開発をすれば必ず品質の確保されたものができるものではない、と言うことを理解しているでしょう。実際の環境で動作させて、初めて問題が発覚する、設計の不備がわかることもあるのです。

エンジニアの方々は、こんな経験を多くしているのではないでしょうか?

問題がないかといつまでも設計書だけに集中していても前進できないことがあることを十分承知しているでしょう。実際の環境で確認する方が問題の抽出が早い場合があることが分かっているかと思います。

どんな業務においても一人で、机上で考えているだけでは、解決できないことが多くあることをしっかりと認識し、「考えるべきか、行動するべきか」をしっかりと判断できるようになりましょう。

おわりに

現代のビジネス環境では、スピードと柔軟性が求められます。考え抜くことも大切ですが、それだけでは変化の激しい時代には対応できません。

「まずはやってみる」という行動の文化を育むことが、企業の持続的成長を支える鍵となります。

エンジニアの育成においても、現場での経験を通じた学びが、設計力や問題解決力の土台を築きます。行動の中にこそ、次の一歩へのヒントが隠れているのです。

人事担当者や経営者の皆さまには、若手社員に対して行動を促す環境づくりと、失敗を成長に変えるマネジメントの視点を持っていただきたいと考えます。考えることに価値があるからこそ、同じだけ“行動すること”に価値があるという視点を、今こそ組織に根付かせていきましょう。

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この記事を書いた人

森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
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