相手の都合を考える 〜仕事は気遣いが重要〜

はじめに

みなさんは、日ごろ仕事をしながらしっかりと、気遣いができていますか?
この問いは礼儀の確認ではなく、成果を高める“方法論”の入口です。職場の成果は一人で完結するものではなく、相手ことを考えながら実施したときに最大化します。

この力を早いうちに身につけることで、周囲の信頼を得て成長するスピードが大きく変わります。

1.上司や先輩も自分の仕事を持っている

例えば、当然ながら、上司や先輩も自分の仕事を持っています。
依頼相手には相手の優先順位があり、会議前・締切前・顧客対応など“手が離せない時間”が必ず存在します。そのため、依頼をする際には「自分の都合」ではなく「相手の状況」を尊重する姿勢が不可欠です。

忙しい時間に唐突に依頼すれば、内容がどれだけ重要でも負担感が大きくなります。逆に、相手の手が空いているタイミングを見計らって声をかければ、快く引き受けてもらえる可能性が高まります。「相手は常に忙しい」という前提で行動するとわかりやすいでしょう。

2.依頼の前に一言添える

上司に何かをお願いする時は、まず、相手の都合を聞いてから依頼していますか?
この一呼吸が、協力を得るための最短ルートです。

話す前には「今お時間よろしいでしょうか?」と、メインの依頼事項の話をする前に一言添えるだけで、印象は大きく変わります。

この短いフレーズは「あなたの時間を尊重します」というメッセージになります。心理学的にも、人は自分の立場を理解してくれる相手に協力的になりやすいと言われています。

つまり、気遣いの言葉は協力を得るための最初の鍵なのです。


3.前夜の依頼が抱える問題

私は部下からある時、「明日の朝、提出する書類です。確認お願いします。」と、前日の夜に依頼されたことがあります。

こちらも時間があればもちろん内容を確認し、添削などを行いますが、自分の仕事の優先度が高ければ対応できない場合もあります。

こうした依頼は、部下にとってもリスクがあります。万が一確認してもらえなければ、翌朝の提出で不備が見つかるかもしれません。

つまり「相手の都合を考えない依頼」は、結局は自分自身に不都合をもたらすことになるのです。

若手は1分サマリ・差分提示・期限宣言を日常化し、上司は繁忙時間帯の共有・相談受付ルールの可視化・良い事例の称賛を仕組み化すると効果的です。

双方向の配慮がある職場は、ミスの早期発見と再発防止が速く、顧客対応力も高まります。

気遣いを欠いた行動は、自分に跳ね返ってくるということを若手は理解しなければなりません。

4.言い回し一つで印象は変わる

前期の例では、せめて、「申し訳ありませんが、明日の朝、提出する書類です。今確認していただくことは可能でしょうか?」と伝えるだけでも、相手に与える印象は大きく変わります。

前記例文:「明日の朝、提出する書類です。確認お願いします。

「上司はいつでも対応してくれる」との前提で依頼しないことです。


場合によっては、相手は「そこまで言うなら、少し無理をしてでも対応してあげよう」あるいは「自分の状況を気にしてくれている」と感じてくれる可能性が高まります。

この気遣いの「一言の違い」が、信頼を積み上げるか、不満を招くかの分かれ道になります。

ビジネススキルとは、こうした小さな工夫の積み重ねに他なりません。

同じ依頼内容でも、言い方ひとつで協力度が変わり、仕事の流れそのものが良くなるのです。

お願いの言語化”は技術です。確認してもらわずに提出するのは本人も困りますよね。


5.常に計画性と余裕を持つ

お互いにいい関係を保ち、気持ちよく仕事を進めるためには、常に気遣いを持って欲しいと思います。相手が今どのような状況にあるか、この仕事をお願いして良いタイミングかを考えること。そして、人に何かを依頼する時には常に計画的に余裕を持つこと。

これは若手社員がもっとも苦手とする部分です。つい自分の進捗に合わせてギリギリに依頼しがちですが、そうではなく「相手が判断・確認できる余裕を確保する」ことが成長への第一歩です。

6.気遣い・気配りはキーパーソンの条件

皆さんが企業でキーパーソンとして活躍するためには、「気遣い」「気配り」は非常に重要な要素です。単に自分のタスクをこなすだけではなく、周囲の人たちの時間とエネルギーを尊重しながら動ける人こそが、リーダー候補として信頼を集めます。

若手育成の視点から言えば、気遣い・気配りを早くから習慣化することで、将来のマネージャーやリーダーに必要な基礎体力を養うことができます。

専門スキルが高くても、周囲を動かす力がなければ成果は限定的です。

逆に、気遣いを自然に実践できる人は、チームの信頼を集め、重要な仕事を任されやすくなります。

キーパーソンは“自分の成果”ではなく“周囲の可動率”を上げられる人です。気遣い・気配りは、人を動かし、意思決定を前に進めるための影響力の基礎体力です。若手がここを早期に理解し、身につけると、重要案件の入口に早く立てます。

7.気遣い・気配りのポイント

ここで、「気遣い」「気配り」のポイントを簡単に示します。

  • みんなが気持ちよく仕事をできる
    ちょっとした気遣いで、職場のストレスは大きく減少します。例えば「確認お願いします」ではなく「本日中にお時間のある時に確認いただけますか?」と伝えるだけで、相手の心理的負担は軽くなります。

“気持ちよさ”は曖昧ではありません。可視化すると、往復回数の減少・差し戻し率の低下・着手遅延の縮小といった数字に表れます。気遣いは情緒ではなく生産性です。

みんなでストレス少ない仕事環境を構築しましょう。

  • 信頼関係を構築できる
    気遣いを受けた人は「この人は自分を尊重してくれる」と感じます。それが繰り返されることで信頼が積み重なり、仕事を任されやすくなります。

相手の時間を尊重する振る舞いが大切です。

やはり、お互いに「気遣い」、「気配り」ができる状態では信頼関係が築きやすいでしょう。
双方向の配慮がある職場は心理的安全性が高く、助け合いが早く、属人化リスクも低下します。

  • 良い成果を作り出す
    部下が上司を気遣うのと同じように、上司も当然部下に気をかける関係は、お互いのやる気を高めます。研究でも「上司に気にかけられていると感じる社員ほど、成果が高い」ことが示されています。

8.職場の雰囲気とパフォーマンスを変える

「気遣い」「気配り」ができるかどうかで、職場の雰囲気やチーム全体のパフォーマンスは大きく変わります。

依頼の仕方一つで協力が得られやすくなり、無駄な手戻しが減り、プロジェクト全体がスムーズに進みます。

逆に、気遣いの欠如は人間関係の摩擦や業務遅延につながります。だからこそ、日常の小さなやり取りを軽んじてはいけません。毎日の一言の積み重ねが、チームを前進させる推進力になるのです。

9.気遣いと気配りの違い

  • 気遣い:他者の感情や状態に注意を払い、その場で行動すること(今の行動)。
  • 気配り:他者のニーズを先読みし、それに応じて準備・行動すること(未来の行動)。

おわりに

「相手の都合を考える」ことは、シンプルながら極めて実効性の高いビジネススキルです。

自分の都合だけで行動するのではなく、相手の状況に合わせて動ける人は、必ず職場で信頼されます。そして、その信頼こそが次の成長のチャンスを引き寄せるのです。

若手の皆さんは、明日からぜひ「相手の時間を尊重する一言」を口に出してみてください。その小さな習慣が、将来のキーパーソンへの道を切り開いていきます。

東京都内の企業様へは直接研修詳細のご説明に伺います。
また、東京都外の企業様へはZoomにてご説明させていただきます。
お気軽にお問い合わせよりご連絡ください。

この記事を書いた人

森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。