仕事の合間に自分の時間を確保する 〜スキルアップ〜

はじめに

会社で机に向かい仕事を始めると、どの程度の時間、集中力を維持できるでしょうか。人によって差はありますが、心理学の研究では「最も集中できるのは15分程度、長くても90」と言われています。大学の授業が90分単位で設計されているのも、こうした集中力の持続時間を根拠としています。

エンジニアとして日々の業務をこなす中でも、集中の波は必ず存在します。その合間に「自分の時間」を意識的に確保し、知識を強化したり、同僚と情報交換したりすることは、長期的に大きなスキルアップへとつながります。

このコラムでは、「若手育成」や「新人研修」にも役立つ観点から、仕事の合間の時間の使い方を考えます。特に、エンジニアに必要な「スキル」を意識しながら、自分の時間を確保する意義や具体的な実践方法を整理します。


第1章 仕事の合間の時間が持つ意味

エンジニアに限らず、社会人にとって時間は限られた資源です。特に若手社員や新人研修を終えたばかりの社員にとっては、目の前のタスクに追われ、自己投資の時間を取りにくい状況があります。しかし、仕事の合間の5分や10分でも、自分のために使う意識を持つことは、将来の成長に大きく影響します。

「知識を調べる、整理する、振り返る」といった小さな行動が積み重なると、後々の会話や業務で活かせる場面が増えます。これは単なる効率化にとどまらず、「自分は成長している」という自己効力感を得られるため、モチベーションの向上にも直結します。


第2章 自分の知識を強化する

自分の集中力の持続時間を理解し、効率的に仕事を進めながら、その合間に関連知識を深掘りすることは非常に効果的です。
例えば、次のような取り組みがあります。

  • 以前から気になっていた専門用語を調べてみる
  • 業務に関連するトレンドや新技術のニュースをチェックする
  • 選別したメルマガを読む
  • 新しいツールやソフトウェアの機能を試す

こうした行動は、単なる「息抜き」ではなく、自分の市場価値を高める投資です。特にエンジニアの分野は技術進歩が早いため、「知らなかった」では会話や議論に参加できないこともあります。

人事担当者や経営者の視点から見れば、社員がこうした自主的な知識強化を積み重ねることは、「若手育成」における大きな効果となります。新人研修で学んだ基礎を、日々の仕事の合間に継続して補強していく習慣を持つ社員は、短期間で成長が見込めるのです。

また、スキルアップのためには「時間管理」も重要です。多くの若手エンジニアは、与えられたタスクをこなすことに精一杯で、学習や振り返りの時間を意識的に確保する余裕がないと感じます。しかし、時間は待っていても生まれません。仕事の合間に「自分の時間」をつくるには、まず業務の優先順位を整理し、効率的に進める工夫が欠かせません。

作業の合間にタスクを小さく区切り、「15分だけ調べる」「10分だけメモを整理する」といった短時間の取り組みを積み重ねることも効果的です。これはビジネススキルとしてのセルフマネジメント能力を磨く訓練にもなります。

新人研修の場で得た知識を活かしきれずに忘れてしまうのは、日々の仕事の流れに追われて学習時間を確保できないからです。逆に、少しでも意識して時間を作り出す習慣がある人は、短期間で知識を定着させ、確実に成長していきます。仕事中の時間管理とスキルアップの両立は、エンジニアとしてキャリアを築くうえで欠かせない基盤なのです。


第3章 同僚と高め合う

仕事の合間の時間は、同僚とのコミュニケーションに使うこともできます。たとえば、休憩中に雑談を交わす中で、思いがけず有益な情報や新しい知識を得られることがあります。

エンジニアの現場では、「この人はなぜそんなことまで知っているのだろう」と驚かされる人がいます。そうした人は、単に専門知識があるだけでなく、日常的に幅広い分野について情報交換をしていることが多いのです。

同僚との短い会話でも、

  • 自分の得意分野を共有する
  • 相手の知見を引き出す
  • 新しい技術やツールについて話し合う

といった積み重ねが、双方のスキルアップにつながります。これは「ビジネススキル」の一つであるコミュニケーション力の育成にも直結します。

経営者や人事担当者の立場から見ても、こうした「隙間時間のコミュニケーション」は、組織文化を活性化させる重要な要素です。現場での自然な会話を通じて若手育成が進む環境は、組織全体の成長を後押しします。


第4章 休日の活用と自己投資

仕事の合間だけでなく、休日に自分の武器を増やすことも大切です。エンジニアにとって「休日学習」は、業務に直結するスキルだけでなく、周辺分野の知識を広げる絶好の機会です。

例えば、

  • 新しいプログラミング言語を触ってみる
  • ビジネス書を読み、考え方を整理する
  • オンライン講座で体系的に学ぶ

といった取り組みは、長期的にキャリアを支える土台となります。

もちろん、すべての時間を学習に費やす必要はありません。大切なのは、少しずつでも「自分のための投資を続ける」ことです。これができる人材は、会社にとっても将来のリーダー候補となり得ます。


第5章 若手育成と組織への効果

個人が仕事の合間に自分の時間を確保する習慣を持つことは、組織にとっても大きなメリットをもたらします。

  • 社員のスキルが底上げされる
  • 自主的な学習文化が育まれる
  • 上司とのコミュニケーションが円滑になる
  • 組織の競争力が高まる

新人研修で得た知識は、現場に出るとすぐに試練にさらされます。しかし、その合間に自分の時間を確保し、自主的に知識を更新できる人材は、短期間で確実に成長します。これは「人的資本経営」を進める企業にとっても大きな価値があります。


おわりに

集中力には限界があり、仕事の合間に小さな時間を確保することは、単なる休憩ではなく「未来への投資」です。
知識を強化することも、同僚と高め合うことも、自分自身の成長につながります。特にエンジニアにとっては、技術の進歩が速い分、日々の小さな積み重ねがキャリアを左右します。

若手育成や新人研修の観点からも、こうした「合間の時間の使い方」を意識することは極めて重要です。

人事担当者や経営者は、社員が自主的に自分の時間を確保し、ビジネススキルを磨ける環境を支援することで、組織全体の競争力を高めることができます。

「常日頃から、自分で自分のスキルを高める」意識を持ち、日々の合間を上手に活かすことが、エンジニアとしての未来を切り拓く第一歩となるのです。

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この記事を書いた人

森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。