少し難しいものに挑戦する

はじめに

皆さんは日々の業務で、失敗を恐れずに挑戦できていますか?

失敗への恐れから、新しいことに踏み出せない若手社員を目にすることが増えているように感じます。しかし、若い頃にたくさん失敗することは、スキルアップや成長のために非常に重要なプロセスです。失敗を恐れずに挑戦し、その経験を活かして成長する文化を育むことは、企業にとっても従業員にとっても大きな価値をもたらします。

本稿では、「失敗」の意義を深掘りし、失敗を前向きに捉え、成長の糧とするための考え方や取り組みについて、具体的な事例やポイントを交えながら考察します。


1.失敗を恐れることの弊害

失敗を恐れるあまり挑戦できない状況が続くと、従業員の成長は停滞し、企業としての競争力も弱まります。実際、日本経済新聞でも「失敗を恐れて挑戦しない若手が急増している」と報じられており、新たなイノベーションが生まれにくくなることが問題視されています。

若手社員が挑戦しない理由には、次のようなものがあります。

(1)失敗による評価低下の恐れ

(2)上司や同僚からの叱責への不安

(3)失敗をフォローする仕組みの不足

    企業がこうした問題を放置すると、挑戦する意欲が削がれ、従業員がルーチン業務に閉じこもる悪循環が生じます。特に、成長段階にある若手社員にとって、失敗を回避する行動は、スキルアップの機会を大きく制限する結果につながります。


    2.失敗は成長の原動力

    失敗は、成長のための重要なステップです。ある若手社員が失敗を経験し、それを乗り越える中で得た教訓が、次の挑戦への糧となります。ここで重要なのは、「失敗をただのミスで終わらせず、反省を経て次に活かすこと」です。

    失敗への前向きな捉え方

    トーマス・エジソンが「私は失敗したことはない。うまくいかないやり方を10,000通り見つけただけだ」と述べたように、失敗は新たな挑戦への足掛かりとなります。これは単なる楽観主義ではなく、実際に失敗から学ぶ姿勢が未来を切り開くという実践的な教訓です。

    また、失敗は若手社員にとって、責任感や問題解決能力を育む絶好の機会でもあります。失敗を通じて、物事の本質を理解し、成長する力を得ることができます。


    3.失敗を共有し、次に活かす文化

    失敗を成長につなげるためには、失敗を共有し、組織全体で学びに変える仕組みが必要です。私が以前勤めていた会社では、「不良事例発表会」が定期的に開催されていました。この場では、失敗をした社員が幹部の前で経緯や原因、反省事項を発表し、多くの従業員がそれを聴講しました。

    失敗共有の効果

    (1)同じ失敗を繰り返さない
    失敗を公開し、組織全体で学ぶことで、他の社員が同じ過ちを避けることができます。

    (2)心理的安全性の確保
    失敗をオープンに語る文化があれば、社員は挑戦しやすくなります。失敗は罰せられるものではなく、成長のための学びであるというメッセージが重要です。

      失敗を共有する文化は、若手育成において特に効果的です。若手が失敗を恐れずに挑戦できる環境は、彼らの成長を促進し、結果的に企業全体の成長にもつながります。


      4.失敗を防ぐための努力と挑戦する環境のバランス

      失敗を恐れないことと、失敗を軽視することは異なります。挑戦を奨励する一方で、可能な限り失敗を防ぐ努力も重要です。

      失敗を防ぐための取り組み

      (1)事前の計画とリスクアセスメント
      計画段階でリスクを見極め、対策を講じることで、大きな失敗を未然に防ぐことができます。

      (2)メンターシップの導入
      若手が挑戦する際、経験豊富な上司や先輩がフォローする体制を整えることで、失敗の影響を最小限に抑えられます。

        失敗を許容する環境作り

        企業は、若手が失敗しても再挑戦できる文化を構築する必要があります。例えば、次のような取り組みが有効です。

        • 失敗の報告に対するポジティブなフィードバック
        • 再挑戦の機会を与える制度の整備
        • 小さな成功を積み重ねることで自信を育むサポート

        5.The Endではない

        若い頃は、失敗しても「意外とたいしたことではない」と私は感じています。もし何かが生じた場合には、上司が責任を取ってくれるぐらいに思っていた方が気持ちも楽に仕事ができます。

        当然ながら上司は部下の仕事を把握しているわけですから。

        何か起きてもThe endではありません。

        あるテレビ番組で見た話ですが、若手が仕事で失敗をしてしまい上司に怒られとても落ち込んでいました。そこで先輩が、「仕事で失敗したとしても命を取られるわけではないので、次回頑張れよ」、と言われたそうです。この後輩はこの言葉が刺さったようで、少し元気を取り戻したとのことです。失敗をするたびに落ち込んでいては、仕事は前に進みません。

        前述したように、失敗したらしっかりと反省し、同じ失敗を他の人が起こさないように原因を究明し、みんなで共有することが重要です。自分も含め、よい教訓となります。失敗した事実を放置することが最もいけないことだと私は考えています。

        もちろん、失敗しないように常に最善を尽くすことは重要です!

        おわりに

        失敗は、若手社員にとってスキルアップや成長のための大切な糧です。企業が若手を育成し、成長を促すためには、失敗を恐れずに挑戦できる環境を整えることが不可欠です。同時に、失敗を共有し、反省を通じて次に活かす文化を育むことで、企業全体の成長を支えることができます。

        失敗を恐れず、挑戦を楽しむ社員を育てること。これこそが、今後の企業にとって最も重要な「人的資本経営」の一環ではないでしょうか。企業の未来を切り開くためにも、失敗から学び、若者が挑戦・成長できる環境作りを加速していきましょう。

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        この記事を書いた人

        森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
        若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。