エンジニアも原価を考えて仕事をする 〜会社への貢献度が向上し、自分の評価も上がり、お客様にも喜ばれる方法〜
エンジニア研修や若手育成について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
はじめに
皆さんは、日々の仕事の中で「お金」のことを考えていますか。
また、「売上」「原価」「利益」といった話は、マネージャーや経営者が考えることであり、若手社員や若手エンジニアの自分には関係がないと思っていないでしょうか。
確かに、若手のうちは目の前の作業を正確にこなすこと、上司や先輩から指示された仕事を進めることに意識が向きやすいものです。技術者であれば、設計、開発、テスト、資料作成、調査など、専門スキルを高めることに集中する場面も多いでしょう。
しかし、企業で働く以上、すべての仕事は会社の売上や利益につながっています。エンジニアの仕事も例外ではありません。むしろ、技術を使って価値を生み出すエンジニアこそ、原価を考えて仕事をすることが重要です。
私の研修では、若手育成やエンジニア研修において、技術・専門スキル以外の重要性をお伝えしています。その中の一つのテーマとして「原価意識」を扱っています。原価を理解することは、単なるお金の知識ではなく、仕事の進め方、顧客対応、自己管理、仕事の効率化、そして自分自身の成長に直結するビジネススキルだからです。
1.売上は自然に発生するものではない
マネージャーになると、期ごとに売上目標があります。その目標を達成するためには、お客様から仕事をいただき、計画を立て、品質を確保しながら、お客様の要求仕様に合ったものを納期までに納入しなければなりません。
たとえばシステム開発であれば、お客様から依頼を受け、要求を確認し、設計し、開発し、テストを行い、品質を確認し、納期に合わせて納入します。そして、お客様に価値を認めていただいて初めて代金をいただくことができます。この代金が会社の売上になります。
つまり、売上とは、お客様から信頼され、依頼を受け、期待された成果を提供して、初めて得られるものです。若手のうちは、自分の担当作業だけを見てしまいがちですが、自分の仕事は必ずどこかでお客様への価値提供につながっています。
2.自分の仕事はいくらで依頼されているのか
若手社員や若手エンジニアにぜひ持ってほしい視点があります。
それは、「自分のやっている仕事は、お客様からいくらで依頼されているのか」という視点です。
会社の仕事は、簡単に表すと次のような関係で成り立っています。
売上 = 総原価 + 利益
利益 = 売上 - 総原価
総原価には、給与、オフィスの家賃、水道光熱費、管理部門の人件費、ソフトウェアのライセンス費用、クラウド利用料、外注費、材料費、残業代などが含まれます。
皆さんが会社で働いている以上、必ずこの式のどこかに関わっています。自分の給与も原価の一部です。自分が使っているパソコン、開発環境、会議室、クラウド環境、教育費用なども、すべて会社が負担しているコストです。
このように考えると、仕事の見え方が変わります。
「この作業を早く終わらせれば、次の仕事に時間を使える」
「手戻りを減らせば、余計なコストを減らせる」
「品質を高めれば、お客様からの信頼が高まる」
「よい提案ができれば、次の仕事につながる」
原価を知ることは、仕事を広い視野で見るための第一歩です。
3.会社の数字を知ると、仕事の見え方が変わる
以前、ある会社様から「従業員から給与をもっと上げてほしいという声が出ている」という相談を受けたことがあります。そこで、その会社の売上や原価が大まかにどれくらいかかっているのかを、実際の数字を示して説明したことがあります。
給与を上げてほしいという思いは、働く人にとって自然なものです。若手社員にとっても、成果を出したら評価されたい、給与や賞与に反映してほしいと考えるのは当然です。
しかし、会社側から見ると、給与は固定費の一部です。給与を上げるためには、その分の利益を確保する必要があります。利益が十分に出ていない状態で人件費だけを増やすと、会社の経営は苦しくなります。
つまり、給与や賞与を上げるためには、会社全体として売上を増やすこと、原価を抑えること、利益を増やすことが必要になります。
ここで大切なのは、「会社の都合だから我慢しなさい」という話ではありません。会社の数字を知ることで、自分たちの仕事が給与や賞与、教育投資、働く環境の改善にもつながっていると理解することです。
4.エンジニアも売上を上げることに貢献できる
利益を増やす方法の一つは、売上を上げることです。
「売上を上げるのは営業や上司の仕事」と考える若手エンジニアもいるかもしれません。確かに、お客様から案件を獲得する役割は営業やマネージャーが担うことが多いでしょう。
しかし、エンジニアも売上向上に貢献できます。なぜなら、エンジニアは技術や現場をよく理解しているからです。
たとえば、お客様に対して次のような提案ができます。
「この機能を追加すると、利用者の作業時間を短縮できます」
「この方式にすると、少し開発量は増えますが、レスポンスが向上します」
「将来の保守を考えると、こちらの構成の方が運用コストを抑えられます」
「この処理を自動化すれば、現場の負担を減らせます」
お客様は、常に皆さんの提案を待っています。もちろん、お客様の予算がなく、提案がすぐに採用されないこともあります。しかし、提案すること自体に価値があります。お客様の立場に立って考え、よりよい方法を提案する姿勢は、信頼関係の構築につながります。
5.原価を減らすために仕事を効率化する
利益を増やすもう一つの方法は、原価を減らすことです。
若手エンジニアにとって、ここは非常に重要です。なぜなら、日々の仕事の効率化は、自分の行動で直接取り組みやすい原価低減だからです。
原価意識を持つとは、「いくら利益が残ったか」だけを見ることではありません。むしろ、「その仕事にいくら使ったのか」「ムダな時間や手戻りはなかったか」「同じ成果をより短い時間で出せないか」を考えることです。
たとえば、30日で予定されていた開発作業を、品質を落とさず25日で終えることができれば、5日分の工数を減らすことができます。工数が減れば、人件費、残業代、クラウド利用料、外注費などの原価を抑えることにつながります。さらに、空いた時間を別の改善活動や次の仕事に使うこともできます。
ただし、急いで終わらせればよいという意味ではありません。確認不足で不具合が発生し、後から修正や再テストが必要になれば、かえって原価は増えます。大切なのは、品質を確保しながらムダを減らすことです。
そのために若手ができることはたくさんあります。
作業前に目的や要求仕様を確認する。
過去の資料や成果物を活用する。
繰り返し作業を自動化する。
チェックリストを作ってミスを減らす。
不明点を早めに相談して手戻りを防ぐ。
自分のスキルを高めて作業時間を短縮する。
これらはすべて、原価を減らすための仕事の効率化です。そして同時に、若手自身の成長にもつながります。効率化によって残業時間が減れば、ワークライフバランスの改善にもつながります。効率よく、品質高く、価値ある仕事をすることは、会社にもお客様にも自分にもよい結果を生み出します。
6.原価意識は自分の評価にもつながる
原価意識を持って仕事をする人は、上司から見ても信頼されやすくなります。
たとえば、ただ「終わりました」と報告する人と、次のように報告できる人では評価が変わります。
「前回の成果物を活用したため、作業時間を短縮できました」
「チェックリストを作成したことで、確認漏れを防げました」
「この作業は自動化できそうなので、次回以降はさらに効率化できます」
「お客様の運用を考えると、この改善提案が有効だと思います」
上司は、単に作業を終える人だけでなく、仕事の進め方を改善し、組織に貢献できる人を高く評価します。必ず上司にアピールしましょう。自分がどのように会社やお客様に貢献したのかを、正しく伝えることです。
「何時間削減できたのか」
「どのようなミスを防げたのか」
「お客様にどのようなメリットがあったのか」
「次回以降にどう活用できるのか」
このように、数字や事実を使って伝えることで、自分の評価にもつながります。
7.原価意識は若手の成長を加速させる
若手育成において大切なのは、言われたことをこなす社員を育てることではありません。自分の仕事の意味を理解し、自ら考えて行動できる社員を育てることです。
原価意識を持つと、仕事に対する見方が変わります。
なぜ納期を守る必要があるのか。
なぜ手戻りを減らす必要があるのか。
なぜ品質が重要なのか。
なぜお客様への提案が大切なのか。
なぜ効率化が求められるのか。
これらの理由が、会社の売上・原価・利益とつながって理解できるようになります。
特にエンジニアは、AI時代において、技術を使うだけの存在ではなく、技術を活用して価値を生み出す存在であることが求められます。専門スキルに加えて、仕事の効率化、顧客対応、コミュニケーション、自己管理、提案力といった技術以外の重要性を理解することが、これからの成長には欠かせません。
原価意識は、若手社員がビジネス全体を理解し、会社やお客様に貢献できる人材へ成長するための重要なビジネススキルです。
おわりに
エンジニアも原価を考えて仕事をすることは、とても重要です。
自分の仕事にどれだけのコストがかかっているのかを理解し、そのコストに見合う価値を生み出せているかを考えることです。
若手社員も、売上を上げること、原価を下げることの両方に関心を持つ必要があります。お客様に提案することは売上向上につながり、仕事を効率化することは原価低減につながります。
そして、これらの行動は、会社への貢献度を高め、自分の評価を上げ、お客様にも喜ばれる仕事につながります。若手のうちから原価意識を持つことは、将来のマネージャーやキーパーソンへ成長するための大切な第一歩です。
ぜひ今日から、自分の仕事を「作業」として見るだけでなく、「会社の成果」「お客様の価値」「自分の成長」につながるものとして考えてみてください。
東京都内の企業様へは直接研修詳細のご説明に伺います。
また、東京都外の企業様へはZoomにてご説明させていただきます。
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この記事を書いた人

森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。
