ビジネススキル:アピールの仕方          (若手と上長のための評価制度)

はじめに

皆さんは、上長に自分の仕事の成果やスキルをしっかりとアピールできていますか?

企業における評価制度や人材育成の中で、部下が上長に自身の成果をアピールする場は重要な役割を果たします。評価面談の場では、単に結果を報告するだけでなく、自分自身を効果的に売り込むスキルが求められます。また、上長はその成果をしっかり引き出し、評価につなげる役割を果たす必要があります。

本コラムでは、アピールする場の重要性、上長に対して効果的にアピールする方法、そして部下への伝え方・フィードバックについて解説し、評価制度を若手育成やキャリア形成にどのように役立てるべきかを考察していきます。

特に、ビジネススキルとしてアピールの場を活用することで、若手社員が自身のキャリアプランをより明確にし、スキルの向上や成果をうまくに上長に伝える方法を紹介します。

1.成果をアピールする場の重要性

多くの企業では、期初に目標を設定し、期末にその目標に対する成果を評価する面談が行われます。この場は、社員にとって自己アピールの重要な機会であり、上長が部下の成長を確認する機会でもあります。

この面談は、単なる評価のための場にとどまらず、若手社員の育成にも大きく関与しています。面談の目的は、給与やボーナスの査定だけでなく、社員のモチベーション向上やスキルの可視化にも寄与します。特に中小企業で、まだ評価制度が確立していない場合は、こうした面談の重要性を改めて認識し、若手育成の一環として、上長と部下が定期的にコミュニケーションを取る場を確保することが求められます。帰属意識もモチベーションも部下と上長のコミュニケーション(会話)なくして向上はありません。評価としては、双方がしっかりと納得することが重要です。

若手社員にとってこの面談は、自分がどのように成長し、どのスキルを伸ばしてきたかを上長に直接伝えるチャンスです。当然ながら上長が気づいていない成果も多くあるのではないでしょうか。また、期の初めに目標としなかったことでも、やり遂げたことがあるのではないでしょうか。

これらの成果をしっかりと上長にアピールしてください。また、これは自身の振り返りの場としても大変重要です。

上記のように、上長は期初に設定された目標だけでなく、それ以外で達成した成果も含めて部下の努力を評価すべきです。特に評価の場では、上長が部下のスキルアップを正確に把握し、それを次の業務やプロジェクトに活かすことが重要です。上長と部下が互いに納得のいく形で評価を行うことは、組織の健全な運営にもつながります。

上長と部下が面談を通じて互いに成果を確認し合う場は、形式的なものに終わらせてはいけません。若手育成のためには、成果だけでなく、成長プロセスやスキルの進捗も話し合うべきです。

2.成果のアピール方法

評価面談で若手社員が意識すべきことは、自分の成果を具体的に、そして定量的に示すことです。単に「これをやりました」「これができました」という表現ではなく、「目標に対してどの程度達成できたか」「スキルがどの程度向上したのか」を明確に伝えることが求められます。例えば、目標以上の成果を達成した場合や、期初には予想していなかった新たなスキルを習得した場合に、具体的にエピソードや数字を交えてアピールすることが重要です。

良いアピールの例
「期初に設定した売上目標に対して、**の施策を実施した結果、120%の伸びを達成しました。売上は目標の1000万円を超え、1200万円となりました。また、これにより新たなスキルである◎◎も習得しました。△△に適用することで今後の業務効率向上に大きく寄与することができます。」

このように、定量的なデータを用いて成果を示すことで、上長は評価を具体的に行いやすくなります。

悪いアピールの例

単に「今期、✖✖をやりました」といった漠然とした報告があります。
このようなアピールでは、上長が部下の成長を正しく評価することが難しくなります。評価を受ける側も、どのようにアピールすることで、自分を上長に認めてもらえるかを考えましょう。

3.スキルの向上と実業務への影響

成果をアピールする際には、「◎◎をすることにより、**のスキルが以前のレベルから**レベルにまで向上した」といった具体的な成長のプロセスをアピールすることが、より上長に響くポイントとなります。

また、単にスキルが向上したというだけでなく、「この成長により、業務にどのような影響を与えたか」「どのような貢献をしたか」を示すことも必要です。

例えば、次のようなアプローチが有効です。
「以前は自分一人では対応できなかった業務が、現在ではチームをリードして実施できるようになりました。具体的には、日程がタイトな**のプロジェクトにおいて、全体の進捗管理を担当し、計画通りの納期で成果物を納品することができました。」

さらに進捗管理においてどのような工夫をしたのかを述べることも重要です。

このように、スキルの向上が実際の業務にどのように反映されているのかを具体的に示すことで、上長は部下の成長を実感しやすくなります。また、これにより部下のキャリアプランに基づいた業務の配分や、次の目標設定もより具体的に行うことができるようになります。

4.キャリアプランの明確化
  (上長とのコミュニケーションの場を活かす)

評価面談は、単なる査定の場ではなく、部下が自分のキャリアプランを明確にする場でもあります。部下が上長に「これをやりたい」「これに挑戦したい」といった将来の希望を伝えることで、上長は部下の意欲を理解し、次のステップに向けたサポートができるようになります。若手にとっては、より上位の仕事を任されるためのステップでもあります。もちろん、会社なので全ての希望が叶うわけではありませんが、こうした意欲的なアプローチが新しいプロジェクトやより責任ある業務に繋がります。

たとえば、ある若手社員が「新規事業の立ち上げに携わりたい」と上長に伝えることで、その社員が持つモチベーションやスキルが、新しいチャンスに繋がる可能性もあります。何も言わなければ上長には何も伝わりません。積極的に自分の意欲を示すことが大切です。

また、上長は部下のキャリア形成をサポートする役割を持ち、部下の成長意欲に応じて業務内容を調整し、新たな挑戦の機会を提供することが求められます。評価面談はこのようなキャリアプランを話し合う場でもあり、部下にとっては重要なキャリアの転機となる場合もあります。

5.部下へのフィードバックと育成の重要性

評価面談において、上長は部下の成果を評価するだけでなく、部下の成長を促すためのフィードバックを行うことも重要です。特に若手社員にとって、上長からの具体的なフィードバックやアドバイスは、自身のキャリア形成に大きな影響を与えるものです。このように、部下が自分の成果やスキル向上をアピールできるような環境を整え、面談の場を有効活用することが重要です。

フィードバックは、改善すべき点や次に取り組むべき課題を明確に示すことだけでなく、成功した点についての十分な承認もモチベーションアップのために必要です。フィードバックにより、部下は自分のキャリアプランをより具体的に描くことができ、次のステップへと進むための道筋を得ることができます。上長はこのプロセスを通じて、部下の成長をサポートし、企業全体の人的資本の強化にも貢献することが求められます。

6.面談における問題点

「上長が面談を形式だけで終わらせていないか」は企業として非常に重要なチェック項目です。これが原因で、貴重な人財が正当な評価を受けられていないために会社を去るケースも少なくありません。

人事ではぜひこれに対するチェック機構を設けることが必要です。

おわりに

上長へのアピールの場、そして部下へのフィードバックの場は、若手社員の成長やキャリア形成において非常に重要です。社員が自分の成果や成長を具体的にアピールすることで、上長はその成長を正確に評価し、次のキャリアステップに向けた適切なサポートを行うことが可能です。同時に、上長は部下の成果を引き出し、正当に評価する役割を果たさなければなりません。

特に、若手社員にとっては、評価面談は自身のキャリアビジョンを明確にし、その実現に向けた道筋を描くための重要な場であり、この機会を最大限に活用することが求められます。

上長は、部下の成長を促進し、その成長に合わせたフィードバックやキャリアサポートを行うことが求められます。双方向のコミュニケーションが、企業全体の成長と発展に寄与することは間違いありません。

面談を通じてキャリア形成のサポートを継続し、組織全体で若手社員の成長を支援していくことが重要です。

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この記事を書いた人

森田 浩史 代表・ビジネススキルアドバイザー、日立グループで38年間ITエンジニア・マネージャーとして培った経験を若手に提供
若手育成の専門家として、中小企業さまを中心にご支援させていただきます。